雨降りの一日 ~前編~

薄暗い朝。

父として、夫としての、朝の家庭業務(送迎とかね)を終え、一旦帰宅し、今度はリュックを背負い孤独に歩いて、自分のお店に向かいます。

"あーー、なんか雨降りそう………"


案の定、朝の仕込み作業を終え、Openの看板を出そうと扉を開けると、しとしと…と小雨。


ご予約もイベントもない、こんな雨降りの日は、店内がいつもに増して静寂に包まれます。

冷蔵庫のモーター音、無駄に臨場感のある店内BGM……皮肉にも当店ウリである高い天井が、こんなときにまでレベルの高い音響効果を発揮してしまうのです(笑)


私はこんなとき、常に書類を引っ張り出してきて、『何か』を企画し始めます。形になりきらない企画を。
ヒマをごまかすための行為なのか、寂しいと頭も冴えません。



窓の外、やがて、テントを叩く雨音が聞こえ始めます。

ピピー! ピピー!  炊飯器、ごはんが炊けた合図です。

まるで自分のためだけに炊いてるかのようなごはんを天地返し。釜にコツコツ当たるしゃもじの音が妙にせつない。

ガラガラガラーー!  陽の目を見るわけでもないのに、次から次と新鮮な氷を作り続けている真面目な製氷機。
「コイツ…… よー働くなぁー、ヒマやのに……、なんぼがんばっても今日はバイト代出ぇへんでー!(笑)」

苦笑しながら放つ、この日最初のひとりごと。「おいっ! 誰かツッコミ入れてやー!」と、二言目に口走りそうです。


12時30分、世間一般的なお昼ごはんの時間。
そもそもごはん提供してるお店だから、この時間は厨房と店内を最もいそいそと走り回ってるはずなのに、該当人物である私は、それどころか時折コクっと小舟を漕ぎながら、チーンと店内で最も簡素なイスに腰掛け、右手にはペン。


「あーー、おなかすいたなぁーーー そーや!!! ごはん炊けたとこやった!!……って、ここに自分のごはん作りに来てんちゃうがな」って思うと、食欲も一瞬で消え去ってしまいます。

いやはや、おりこうさんなおなかです。親分の顔色をうかがいながら、グーって鳴くのをやめ、寝たフリまでしてくれます。


さぁ……、『何か』の企画に戻るとするか。





その時、窓の外に人影。
声をかけるべきか、見て見ぬふりして、今の態勢を維持するべきか。

以前にパートタイマーとして勤めていたカフェでは、入り口に人影を確認すると「入り口○○名さまでーす!」とスタッフに合図し、すぐに入店しやすいように扉を開けにいきました。しかし、たまにこれが仇となり、逃げるように去っていく方もおられましたので、どうも当店では躊躇してしまいます。

私は、そのトラウマ的なことを避けるため、今回は現状維持を試みました。

すると、カクンっと、ドアノブが動きます。

おっっ!!!


この日、最初で最後になるかもしれないお客様!


「いらっしゃいませ!」
喜びのあまり、笑顔もギュンギュンです!


「あー、ここ、クリーニング屋さんやったとこやね!?」

「えっ! あー! はい、そうですよ! 今は喫茶店させてもろてます。 まぁ、どうぞどうぞ!」

「いやいや、何の店かいなーと覗いてみただけ(笑) 用事あるから、また今度ね」

「あー( ; ̄▽ ̄) はいー、またお待ちしてますー」




(笑)………うーん、物凄いのんびりしてはったけど…… どんな用事やろか?(笑)




こんな流れが続く日は、とことん続くわけで。

人間ですからね、あまり続くと、やはり気持ちも素直に萎えていきます。





少し雨足が強くなってきたようです。
もう今日はゼロやね、早く閉めよう。

仕方ないこととは言え、やはり一応世帯主ですから。ボウズで帰るのは非常に辛く、明日への活力も消滅していくものです。

やむを得ずぼちぼち片付けていこうと、掃除道具を取りに裏へ入ります。

店内に戻ると… また、入り口に人が立っています。

今度はトラウマも完全無視して扉に一直線。
「入り口一名さまです!」 心の中で唱えます。

扉を開けるとひとりの男性の姿。

開いた扉に少し驚き
「あっ! あー、すみません! ちょっと雨が急に…… すぐ帰りますから!」

「あー、いえいえ、雨宿りですね! 良かったらどうぞ!」

「えっ! いえ、すみません、家が近くなんで、すぐなんで!!」

「……(^-^; いや、だから、どうぞ、遠慮なく、この傘使ってください。別に返却とかも気にされなくていいので! 気を付けてお帰りくださいね。」




まぁ、こんなものです、こういう日は。

雨宿りの役に立ったわけだし、今日はこれで任務完了ということで。


-後編へつづく-

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